はじめに

飲食店の新規集客は、業界を問わず事業の成長と発展に欠かせない重要な課題です。新型コロナウイルス感染症の影響により、外食需要が大きく落ち込んだ時期もありましたが、現在は徐々に回復しつつあります。そうした中で、いかに新規顧客を獲得し、リピーターを増やしていくかが、飲食店経営の鍵となっています。本記事では、飲食店の新規集客に役立つ様々な戦略と具体的な施策を紹介します。

ターゲット層の明確化と分析

新規集客に取り組む前提として、まずは自店のターゲット層を明確にし、その特性を理解することが不可欠です。ターゲット層には大きく分けて4つの層があり、それぞれに合わせた集客アプローチが求められます。

4つのターゲット層

飲食店のターゲット層は以下の4つに分類されます。

• 非認知層: 店の存在自体を知らない層
• 潜在層: 店の存在は知っているが、利用したことがない層
• 顕在層: これまでに利用経験があり、再来店の可能性がある層
• 顧客層: 定期的に来店している既存のリピーター層

これらの層に対して適切な集客施策を展開することが、新規顧客の獲得と既存顧客の維持につながります。

ペルソナの設定

ターゲット層をさらに具体化するためには、ペルソナ(理想的な顧客像)を設定することが有効です。ペルソナを設定することで、ターゲットの年齢層、性別、職業、嗜好、ライフスタイルなどの情報を明確にでき、それに基づいた集客施策を立案しやすくなります。

例えば、「20代〜30代の働くOL向けの健康的なランチ」や「子連れファミリー向けのキッズメニュー充実のカフェ」など、ターゲットに合わせてコンセプトを絞り込むことができます。

SNSやアンケートを活用した分析

ターゲット層の詳細な分析には、SNSやアンケートの活用が有効です。自社のSNSアカウントのフォロワー属性を分析したり、来店客にアンケートを実施したりすることで、ターゲットの興味関心や要望をよりリアルに把握できます。これらの情報を活用して、ターゲットにマッチした集客施策を立案しましょう。

集客に向けた4ステップ

ターゲット層を明確にした上で、実際の集客に向けて以下の4つのステップを踏むことが重要です。

ステップ1: 現状把握

集客施策を立案する前提として、まずは自店の現状を正しく把握する必要があります。具体的には以下の点を洗い出します。

• 商品・サービスの強み(自慢の一品、こだわりの食材など)
• 集客できている/できていない曜日や時間帯
• 人気のあるメニューと売れ残りメニュー
• 来店客の特徴(年齢層、人数、目的など)

現状を正確に把握することで、自店の課題や改善点が見えてきます。そこから適切な集客施策を導き出すことができます。

ステップ2: 顧客理解

次に、自店の顧客を深く理解することが重要です。顧客データを分析し、以下の点を把握しましょう。

• 予約状況(曜日、時間帯、人数など)
• リピート来店の頻度
• 人気メニューと注文傾向
• 顧客の属性(年齢層、性別、居住地域など)

このように顧客の実態を掴むことで、ニーズにマッチした集客施策を立案できます。例えば、リピーターが多い曜日にはスタンプカードを導入したり、人気メニューをSNSで情報発信したりと、具体的な施策が見えてきます。

ステップ3: 戦略立案

現状把握と顧客理解を踏まえた上で、具体的な集客戦略を立案します。ターゲット層ごとに適した施策を組み合わせることが重要です。

施策の例としては、以下のようなものが挙げられます。

ターゲット層	施策例
非認知層	看板の設置、チラシ配布、SNS広告
潜在層	オープニングキャンペーン、メディア露出、口コミ施策
顕在層	メルマガ登録、来店ポイント、リピーター割引
顧客層	会員制度、スタンプカード、先行情報発信

戦略立案の際は、費用対効果や実現可能性なども考慮し、自店に最適な施策を選びましょう。

ステップ4: 実践と改善

立案した集客施策を着実に実践し、その効果を検証していきます。施策の成果を測るためのKPIを設定しておくと良いでしょう。

KPIの例としては、以下のようなものがあります。

• 来店客数の増加率
• 新規顧客比率
• リピート率
• 客単価の上昇率
• SNSのエンゲージメント率

施策の効果が出にくい場合は、原因を分析し、対策を講じる必要があります。また、施策の改善点を洗い出し、よりよい集客につなげていきましょう。

集客施策の具体例

ここまでで、集客に向けた基本的な流れと留意点をご紹介しました。続いて、具体的な集客施策の例をいくつかご紹介します。

SNSを活用した情報発信

近年のSNSの普及により、飲食店の集客にSNSが欠かせなくなっています。SNSを効果的に活用することで、低コストで幅広い層にリーチできるというメリットがあります。

SNSを活用した具体的な施策の例を挙げます。

• 公式アカウントの開設(Instagram、Facebook、Twitter等)
• メニューやお店の雰囲気を映した魅力的な写真の投稿
• フォロワーとのコミュニケーション(質問への回答、キャンペーンの実施など)
• インフルエンサーとのコラボレーション
• ハッシュタグの活用による拡散力の向上

SNSを活用することで、認知度の向上と新規顧客の獲得を狙えます。ただし、単に情報を発信するだけでなく、フォロワーとのエンゲージメントを高め、良質なコミュニティを形成することが重要です。

メディア露出とプレスリリースの活用

飲食店の集客におけるメディア露出の重要性は高く、効果的なプロモーションとなります。特に、地域密着型の飲食店にとって、地元メディアへの露出は非常に有効です。

メディア露出を実現するための具体的な施策は以下の通りです。

• プレスリリースの配信(新店オープン、メニューリニューアル、イベント情報など)
• 取材協力(インタビューや試食会の開催)
• プレゼントキャンペーンの実施(メディア読者向け)
• メディア掲載レポートの活用(ホームページやSNSでの情報発信)

プレスリリースを配信するだけでなく、メディアとの良好な関係を構築することが重要です。積極的な取材協力や情報提供を行い、メディアの取材ニーズにも応えていきましょう。

ターゲットに合わせたプロモーション施策

ターゲット層に合わせたプロモーション施策を展開することで、より効果的な集客が期待できます。例えば、以下のようなプロモーションが考えられます。

• 子連れファミリー向け:
  • キッズメニューの充実
  • キッズスペースの設置
  • ファミリーデーの設定(割引やプレゼントなど)
• OL向け:
  • オフィス街での路面チラシ配布
  • ランチタイムの特別メニュー
  • 駅ビルでのポップアップ出店
• シニア向け:
  • 健康志向メニューの提供
  • 平日の夕方割引
  • 高齢者向けイベントとのコラボレーション

このようにターゲットの嗜好やライフスタイルに合わせた施策を打つことで、効果的な集客が可能になります。

デジタル化の推進

スマートフォンの普及に伴い、飲食店の集客においてもデジタル化が不可欠になってきています。ここではデジタル化を推進するための具体的な施策をご紹介します。

ホームページの充実

ホームページは自店の情報発信の要となるWebサイトです。ホームページを充実させることで、潜在顧客の獲得や既存顧客の囲い込みが可能になります。

ホームページでは以下の点に留意しましょう。

• 店舗情報の明確な掲載(住所、電話番号、営業時間など)
• メニューの詳細情報と魅力的な写真の掲載
• アクセス情報と地図の掲載
• ブログやSNSリンクの設置
• スマートフォン対応(レスポンシブWebデザイン)

さらに、SEO対策を行うことで、検索エンジンからの送客を狙えます。ホームページは潜在顧客に向けた最初の入り口となるため、魅力的な情報発信が不可欠です。

グルメサイトの活用

グルメサイトへの店舗情報の掲載は、飲食店の集客において有効な手段の一つです。食べログやぐるなびなどの大手サイトに加え、地域密着型のグルメサイトの活用も検討しましょう。

グルメサイトへの情報掲載で得られるメリットは以下の通りです。

• 新規顧客の獲得が期待できる
• 口コミ投稿による信頼性の向上
• ランキングへの掲載でアピール力が高まる
• プッシュ通知など追加サービスの活用が可能

ただし、一部のグルメサイトでは有料での掲載が必須となる場合があります。自店のターゲット層に合わせて、最適なサイトを選択しまし
ょう。

デリバリーサービスの活用

デリバリーサービスの利用は新型コロナウイルス感染症の影響で急速に広がりました。最近では高級レストランや個人経営の飲食店もデリバリーサービスに参入する動きが見られます。

デリバリーサービスのメリットは以下の通りです。

• 新規顧客の獲得が期待できる
• 店舗までの移動が不要で利便性が高い
• デリバリー専用のメニューを提供できる
• テイクアウトと比べて温かい料理を提供できる

デメリットとしては、デリバリー手数料がかかることや、配送時の品質管理が難しいことなどが挙げられます。しかし、新規顧客獲得の有力な手段となるため、導入を検討する価値は十分にあります。

イベントやコラボレーションの企画

集客には、店舗運営以外にも、様々なイベントやコラボレーションを企画することが効果的です。ここでは、独自のイベントやコラボレーションによる集客施策をご紹介します。

季節限定メニューの提供

季節感のあるメニューを期間限定で提供することは、リピーターだけでなく新規顧客の集客にも一役買います。具体的には以下のようなメニューが考えられます。

• 春: 新茶や山菜を使った和風メニュー
• 夏: 冷たい麺や冷製スープ、フルーツを使ったデザートメニュー
• 秋: 旬の食材を使った秋の味覚フェア
• 冬: 鍋物やあったかメニュー

季節限定メニューは、SNSでの露出が期待でき、話題性と新規性があるため集客効果が高くなります。メニュー開発時には、食材の確保や調理スタッフの手間なども考慮しましょう。

コラボレーション企画

他のブランドや企業、タレントとのコラボレーションを行うことで、新たなファン層の獲得と集客が期待できます。特にアニメやゲームなどの人気コンテンツとのコラボは、マニアックな集客効果が見込めます。

コラボレーション企画の一例を紹介します。

• 人気アニメやゲームとのコラボメニューの提供
• 地元の名産品メーカーとの共同開発商品の販売
• インフルエンサーを招いたイベントの開催
• 他業種とのコラボレーション(アパレルブランド、化粧品など)

コラボレーション企画を成功させるためには、双方のファンが共感できるテーマ設定が重要です。また、SNSでの情報発信やイベントの開催など、さまざまな施策を組み合わせることが効果的です。

地域密着型のイベント出店

地域に根ざした飲食店であれば、地域のイベントに出店することで新規顧客の獲得が期待できます。例えば、祭りや駅前イベント、マルシェなどで出店し、自店の料理を広くアピールすることができます。

地域密着型のイベントのメリットは以下の通りです。

• ご近所への露出が期待できる
• 低コストで広くPRできる
• ターゲットとの直接的な交流が可能
• 出店の様子をSNSで発信できる

出店の際は、手軽に食べられるメニューの提供や、特設ブースでの雰囲気作りなどの工夫が求められます。事前の準備とスタッフ教育を十分に行いましょう。

まとめ

飲食店の新規集客には、ターゲット層の明確化と分析、現状把握と顧客理解、戦略立案と実践、効果検証と改善といった一連のプロセスが不可欠です。また、SNSの活用、メディア露出、プロモーション施策、デジタル化の推進、イベントやコラボレーションの企画など、様々な施策を組み合わせることが重要です。

集客は一朝一夕に成果が出るものではありません。継続的な取り組みと、施策の改善が欠かせません。しかし、ターゲットに合った適切な施策を打ち続けることで、確実に新規顧客の獲得とリピーター化につながります。自店の強みを活かしつつ、新しい取り組みにも果敢にチャレンジすることが、飲食店の発展につながるはずです。

よくある質問

ターゲット層の設定や分析はどのように行えばよいですか?

ターゲット層を明確にし、SNSやアンケートなどを活用して詳細に分析することが重要です。ペルソナの設定も有効で、年齢、性別、職業、嗜好、ライフスタイルなどの情報を基に、ターゲットに合わせた集客施策を立案できます。

集客施策にはどのようなものがありますか?

SNSを活用した情報発信、メディア露出、ターゲットに合わせたプロモーション、ホームページの充実、グルメサイトの活用、デリバリーサービスの導入、季節限定メニューやコラボレーション企画などが効果的な集客施策として挙げられます。

集客活動を成功させるためのポイントは何ですか?

ターゲット層の明確化と分析、現状把握と顧客理解、適切な集客戦略の立案、実践と効果検証、そして改善を繰り返すことが重要です。様々な施策を組み合わせ、継続的な取り組みが成功への近道です。

地域密着型の飲食店にはどのような集客施策が適していますか?

地域のイベントへの出店や、地元メディアへの露出などが効果的です。地域に根ざした取り組みを行うことで、ご近所への露出や直接的な交流が期待できます。